中小企業こそ取り入れたいコーポレートブランディングとは?

中小企業こそ取り入れたいコーポレートブランディングとは?のイメージ

ニューノーマル時代、市場の競争を勝ち抜くためには「コーポレートブランディング」が大事!と言われます。しかし、なぜコーポレートブランディングが必要なのか、そもそもコーポレートブランディングとは何なのかを具体的に説明できる方は少ないのではないでしょうか。 そこで今回は、コーポレートブランディングについて、改めてその意味を、そして中小企業でこそ必要な理由について解説します。

そもそも、コーポレートブランディングとは?

「コーポレートブランディング」とは、一言で言うと、「企業の魅力的なブランドイメージを意図的に作り上げていくこと」です。 「ブランド」と聞いて私たちがまず連想するのは、いわゆる「ブランド品」かもしれません。 例えば、「LOUIS VUITTON」、「レクサス」など、ブランドのついた商品は、品質が高かったり、デザインが優れていたり、持っていることに価値があることを示してくれるものです。しかし、これらはあくまで商品のブランドであり、企業のブランドではありません。 もちろん商品開発をおこない、自社独自の製品がある場合にその性能や価値を高めることは必要ですが、仮に同じ商品が同じ価格で売られていた場合、どのお店で買いたいかという決め手になるのが、その企業に対してのブランドイメージではないでしょうか。

企業ブランドとは、その社名を聞いた人が「あの会社は◯◯なイメージ」と思い浮かべる時の「◯◯」に該当する部分であり、「企業の個性」を表わすものです。 「コーポレートブランディング」とは、「あの会社は◯◯なイメージ」という、「◯◯」を浸透させていくために、企業が行う様々な活動を差しています。

例えば「誠実な企業」というイメージを目指すのであれば、自社の商品やサービスそのものを「誠実に作り上げる」だけではなく、関連する取引先や顧客、従業員など、企業を取り巻くステークホルダーに対しても「誠実な対応」を心がけていく必要があります。 クレームに対して感情的に対応したり、面倒だから放置したりといったことをする企業が「誠実」というイメージを持たれることは難しいでしょう。

つまり「コーポレートブランディング」とは、商品やサービスといった企業が持つ個々の要素だけでなく、日常業務や従業員への待遇なども含む企業活動全てを、経営陣が定めるブランドイメージに沿うように行うことを指すのです。

中小企業にとってコーポレートブランディングが大切な理由

次に、大企業ではなく中小企業にとってこそ、コーポレートブランディングが大切な理由を解説いたします。その理由は大きく分けて以下の2つです。

(1)多数の競合他社から、選ばれ続けるため
(2)社内の士気を高めるため

順に見ていきましょう。

(1)多数の競合他社から、選ばれ続けるため

「コーポレートブランディングなんて大企業だけのもの」と思う方が多いのですが、実は、中小企業こそコーポレートブランディングが求められています。

出典:中小企業庁編「2019年版 中小企業白書」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/PDF/chusho/00Hakusyo_zentai.pdf

中小企業庁がまとめた「2019年版 中小企業白書」によると、日本における企業の構成のうち、全企業の99.7%が中小企業なのです。 つまり、中小企業同士の競合というのは、大企業とは比較にならないほど厳しいといえます。 ここで重要になってくるのが、コーポレートブランディングなのです。 コーポレートブランディングをおろそかにして、価格競争に陥ってしまった場合、企業の利益はどんどん薄くなってしまいます。

その結果が一番右のグラフの、中小企業の付加価値は全体の約53%という部分です。 企業数は全体の99.7%、従業員数は全体の約70%である中小企業であるのに、全体の約53%の付加価値額しか生み出していません。 価格以外の面で顧客や取引先から選ばれ、付加価値を上げるために、コーポレートブランディングは欠かせない手段の一つです。

(2)社内の士気を高めるため

少子高齢化が言われて久しいですが、企業にとってこれからますます重要になるのが、人材の確保です。 使い古された言葉ですが「企業は人なり」。そこで働く人材が前向きに仕事に向かってくれることが、企業の発展には不可欠です。 前段で「コーポレートブランディングは日常業務や従業員への待遇なども含む企業活動全てを、経営陣が定めるブランドイメージに寄せて行う」と解説しました。 ここでいう「従業員への待遇」というのは、何も大企業を上回るような給与や賞与、福利厚生を保障すべきということではありません。

例えば「変化に対応する」というブランディングを行うのであれば、働き方の改善は不可欠です。 人口動態の変化を元に、今までの働き方を見直し、働く時間帯や場所、家族の都合による柔軟な休暇制度など、社員の状況が変化しても働ける環境を作るなど、その時の情勢に合わせて、従業員への対応も柔軟に変化させる必要があります。 コーポレートブランディングというと、顧客や取引先など、広く一般に周知されることを考えてしまいがちですが、社内制度の改革や教育を行うことも重要なのです。 社員に自社のブランドとその目指すところを繰り返し伝えていくこと、そしてそれを反映させた処遇を行うことで、社員が自ずと企業ブランドを反映した働き方や行動を行うようになります。 さらに、「この会社で働くことが誇りだ」と思われるような企業であれば、良い人材というのは門を叩いてきてくれるのです。

逆にどのような名門企業でも、変わらないことを是としている企業では、今後はどうなるかわかりません。特にこれからの世代は、ネームバリューにとらわれない「自分にとっての良い会社」を求めています。 自社のコーポレートブランディングを行うことで、顧客や取引先からだけではなく、そこで働く従業員からも「自分の会社は良い会社だ」という認識をもたれることで、社内の士気も高めることができるのです。

コーポレートブランディング3つのメリット

企業は、他社との差別化を図るためにコーポレートブランディングを行う必要がありますが、中小企業では、その規模ならではのメリットが存在します。

(1)求められるブランドイメージが把握しやすい
中小企業の場合は、経営陣と顧客や取引先の距離が近いため、「自社に求められていることは何か」「どうすれば彼らに愛される企業になるか」というブランディングに必要なニーズを直接つかむことができます。これは、大企業にはないメリットです。

(2)コストをかけずに取り組みやすい
大企業であれば、トップの言葉を末端まで届けるのには、大変な労力が必要です。しかし、従業員との距離が近い中小企業であれば、コーポレートブランディングが目指す企業イメージやブランドビジョンの共有は比較的容易であり、トップダウンで物事を運びやすいというメリットがあります。

(3)トライアンドエラーがやりやすい
コーポレートブランディングはずっと同じで良いとは限りません。また、最初に提示したブランドイメージがずれてきてしまった場合でも、その転換が比較的容易なので、試行錯誤を繰り返すことが可能です。

企業の存在感と信頼感を高めるコーポレートブランディングは、決して大企業だけのものではありません。むしろ中小企業こそ取り組むべき施策であるといえるでしょう。